1.総則
1.1 目的
1.総則 1.1 目的 このガイドラインは、「コンピュータ使用医薬品等製造所適正管理ガイドライン」(平成4年 2月21日薬監第11 号:平成17 年3 月30 日付薬食監麻発第0330001 号により廃止)に代わる ものとして、「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」(平成16 年厚生労働省令第179 号。以下「GMP 省令」という。)の適用を受ける医薬品又は医薬部外品を製造販売する製造販売業者又は製造する製造業者等(以下「製造販売業者等」という。)が、「医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の品質管理の基準に関する省令」(平成16 年厚生労働省令第136 号。以下「GQP 省令」という。)及びGMP 省令に基づく業務を行うためのコンピュータ化システムの要件を明確にし、コンピュータ化システムが意図したとおりに動作することを 保証するため、これを開発する際に必要な事項、これを検証するバリデーションに関する事項 及び運用管理に関する遵守事項(バリデートされた状態の維持や廃棄に関する事項等)を定め、 GQP 省令及びGMP 省令の適正な実施の確保を図ることを目的とする。 |
本ガイドラインは、旧ガイドラインである「コンピュータ使用医薬品等製造所適正管理ガイドライン」を置き換えるものである。「コンピュータ化システムが意図したとおりに動作することを保証するため」という文章が記載されているが、これはCSV の目的そのものであり、コンピュータ化システムの品質保証のゴールと言えるものである。
「意図した」とは、ユーザの要求を指す。ユーザの要求事項はあらかじめ要求仕様書で明らかにしておかなければならない。GxP業務で使用するコンピュータ化システムは、ユーザの「意図」どおりに開発、検証、運用、廃棄を行わなければならないのである。
このガイドラインにおいては、コンピュータ化システムの開発から、検証、運用管理及び廃棄までの流れを総合してコンピュータ化システムのライフサイクルという。ライフサイクル全体の構成を別紙1「コンピュータ化システムのライフサイクルモデル」に示す。 |
新ガイドラインでは、コンピュータ化システムの開発から、検証、運用管理および廃棄までをライフサイクルとして定義している。しかしながら本文は、ライフサイクルにもとずいていない。すなわち時系列にはなっていないので、注意が必要である。なお、廃棄は運用管理業務に含まれる。
また、このガイドラインに示した管理方法は標準的な例を示したものであり、これに代わる方法で、それが同等又はそれ以上の目的を達成できるものである場合には、その方法を用いても差し支えない。 |
本ガイドラインが発出される前に、CSV SOPを作成してあったような場合など、改めてSOPを作成したり、改定する必要がないよう配慮された記載となっている。当然のことながら、当該SOPは、本ガイドラインの基準を満たすものでなければならないことは言うまでもない。しかしながら、日本の査察においては、本ガイドラインをもとに実施されるので、注意が必要である。 その場合において、自社のSOPと本ガイドラインとの整合性を示すことができるように、対応表などの準備が必要となる。 Q&A 集の1.では、「それに代わる適切な方法」とは、具体的にはISPE の「GAMP ガイド」やPIC/S の「Good Practices For Computerised Systems In Regulated "GXP" Environments」等の欧米のガイドラインに基づいた方法が挙げられる。とある。 「GAMP ガイド」は、2008 年2 月に発表されたGAMP 5 が最新である。
またPIC/S ガイダンスは、2004年に発行されたものが最新であり、その内容はGAMP 4と整合している。PIC/Sガイダンスは、ヨーロッパで広く製薬業界やサプライヤが参考にしている。おそらく、日本の企業でPIC/S ガイダンスに準拠してSOP を作成しているところは少ないであろう。 PIC/Sガイダンスには、カテゴリ分類という考え方はない。またカテゴリ分類の考え方は、 GAMP 4 とGAMP 5 では異なるので注意が必要である。
1.2 コンピュータ化システムの取扱い
1.2 コンピュータ化システムの取扱い このガイドラインは、 GQP 省令及び GMP 省令に関連するシステム並びに相互に連携したコンピュータ化システムを対象として取り扱うこととしているため、 GQP 省令や GMP 省令における組織・役割に応じた表現を用いていないが、バリデーションや変更・逸脱の管理など、 GMP 省令においては品質部門等の承認が必要であり、 GQP 省令においては品質保証部門による管理体制の中で進めなければならない。従って、製造販売業者等において組織の形態や該当するシステムの範囲を考慮して各々の組織・役割に応じた責任と権限を3 . に規定する「コンピュータ化システムの開発、検証及び運用管理に関する文書」の中に明確にすることが必要である。 |
GQP 省令と GMP 省令では、品質保証部門の役割と責任に関して対応が異なる。「コンピュータ化システム管理規定」等を、 GQP 部門と GMP 部門にまたがって作成する際などは、十分な検討が必要となる。新ガイドラインにのっとって、新システムを導入する際には、組織・役割に応じた責任と権限をあらかじめ「コンピュータ化システム管理規定」に明らかにしておかなければならない。その場合、もし製造販売業者と製造業者で法人を分けているような場合は、さらに複雑になる。なぜならば法人が別であるため「コンピュータ化システム管理規定」は、それぞれが作成し、各品質保証部門が承認しなければならないからである。
「医薬品等の承認又は許可等に係る申請等に関する電磁的記録・電子署名利用のための指針」(いわゆる ER/ES 指針)は、平成 17 年 4 月 1 日に発出され、すでに 5 年半以上が過ぎている。しかしながら、これまで実質、臨床試験(治験)における EDC の利用に適用されてきたにすぎない。今後は、 GMP や GQP の分野でも、 ER/ES 指針を遵守しなければならないこととなった。ER/ES 指針への対応の要求が盛り込まれた訳は、 PIC/S との整合性を考慮したためと思われる。思い起こせば、米国では FDA が、 1997 年 8 月に、 21 CFR Part 11 を施行し、業界がその対応に大変苦慮したことがあった。特にコンプライアンスコストが膨大にかかってしまうといった問題点があった。日本においても同様なことが繰り返されないよう、E R/ES 指針の解釈を適切に行い、計画性を持って遵守することが望まれる。米国では、レガシーシステムであっても、 Part11 適応対象とされたために、監査証跡の機能を持たないシステムの対応に苦慮した経緯がある。しかしながら、パブリックコメントの回答 22 には、以下の記載がある。監査証跡の機能が実装されていない場合、手書きの記録等で、変更履歴、操作履歴が適切に管理されていれば差し支えありません。それらの運用をあらかじめ運用管理基準書等に規定しておくことが必要です。この記載によると、コンピュータ化システムは監査証跡機能を備えていなくても良いようにとらえられる。ガイドラインの適用を受ける製薬企業にとっては、歓迎できる回答であるが、監査証跡機能が備えられていなければ、Part 11 やANNEX11 を満たさないこととなり、欧米各国では規制要件違反となる。筆者は、この回答による考え方が、厚生労働省全体のものなのか、それとも監視指導・麻薬対策課だけの見解であるのかについて関心を持っている。すでに査察が実施されてる臨床試験における EDC システムでは、監査証跡が自動的に採取されなければならないことは、周知の事実である。
なお、このガイドラインの適用日以前に開発又は運用が開始されているシステムであって、「コンピュータ使用医薬品等製造所適正管理ガイドライン」に示された方法又はそれに代わる適切な方法で開発、検証及び運用等が行われていないシステムについては、当該システムの適格性を確認する必要がある。 |
適用日以前に稼働したシステムの適格性確認を要求している。案の段階では「回顧的なバリデーション」という記述があったが、新ガイドラインでは削除された。 パブリックコメントの回答 24 には、回顧的なバリデーションの用語については、回顧的バリデーションとの誤解を生じる恐れがあることから、この用語を使用せず、ガイドラインには適格性を確認するよう記載し評価の方法については Q&A で補足する。との記述がある。では、適格性を確認する方法とはどういうものであろうか。 Q&A 集の 2 には、以下のような記述がある。適格性を確認する方法として、当該システムの開発時の仕様書などの文書類や記録類に遡って、その適格性を検証する方法や、現在の使用目的に適合した要求仕様やそれに準じる文書との適格性を確認する方法等が考えられるが、適格性の確認にあたっては、現在の運用における記録類の照査や定期的レビューの結果を利用してもよい。なお、使用目的に適合した要求仕様やそれに準じる文書とは、例えば、当該のコンピュータ化システムに関する「標準操作手順書」や、そのコンピュータ化システムが適用される製造プロセスに関する製造指図書等が考えられる。これらの文書に基づいて適格性を検証する場合は、この両文書を合わせて要件を確認するなど、検証項目に漏れのない様な配慮も必要である� ��製造販売業者等は自社の品質保証に関するポリシーやリスク評価の結果等を考慮し、「コンピュータ化システム管理規定」等にその対象や実施方法、検証項目等に関する基本的な考え方を定め、それに基づき実施すること。すなわち適用日以前に稼働したシステムの適格性確認の実施方法には、以下の 3 種類があると理解する。
1) 当該システムの開発時の仕様書などの文書類や記録類に遡って、その適格性を検証する方法
2) 現在の使用目的に適合した要求仕様やそれに準じる文書との適格性を確認する方法
3) 現在の運用における記録類の照査や定期的レビューの結果を利用する方法
上記のうち、 3. が本来の「回顧的バリデーション」である。
1) は、過去に作成した仕様書等を精査する方法で、おそらく多くの問題点が見つかると思われる。
2) は、過去に作成した仕様書等はさておき、現在のコンピュータ化システムの使用方法が、ユーザの要求を満たしているものであるかどうかを検証する方法である。おそらくこの方法が最も容易であろう。
注意しなければならないことは、「適用日以前に開発又は運用が開始されているシステム」を対象としているため、本日以降に開発又は運用が開始されてるシステムも対象になることである。
1.3 カテゴリ分類
1.3 カテゴリ分類 このガイドラインの適用を受けるコンピュータ化システムについては、開発、検証及び運用の各段階において実施する内容を決定(「4.3 システムアセスメントの実施」を参照)するために、システムを構成するソフトウェアの種類に応じて、あらかじめソフトウェアカテゴリを決定するものとする。カテゴリ分類の基準及びカテゴリ毎の一般的対応の例を別紙2「カテゴリ分類表と対応例」に示す。 |
本ガイドラインでは、 GAMP と同様、ソフトウェアをカテゴリ分けしている。カテゴリはすなわちソフトウェアのリスクの分類である。カテゴリの数字が大きくなるほど、ユーザによる変更の度合いが大きく、ソフトウェアに欠陥が含まれる可能性が増大する。ここで注意が必要なのは、新ガイドラインは、 GAMP 5 のカテゴリ分類と整合させており、GAMP 4 のカテゴリ分類ではないということである。もし自社の CSV SOP が GAMP 4 に従って記述されている場合、新ガイドラインとは齟齬が生じる可能性がある。「あらかじめソフトウェアカテゴリを決定するものとする」とあるが、ソフトウェアのカテゴリは、あらかじめ決定できないのが実情である。なぜならば、供給者と打合せを行い、パッケージをどのように変更するのか、すなわち構設定するのか、カスタマイズするのか、あるいは何の変更もしないのかを決定してからでないと、最終的にカテゴリは決まらない。パブリックコメントの回答 80 には、以下の記載がある。本ガイドラインの記述は時系列に並んでいるわけではなく、供給者決定前にカテゴリ分類を行なうことを求めたものではありません。「時系列に並んでいない」とのことであるが、それでは何に対して「あらかじめ」なのかが疑問である。
別紙 2 では、ソフトウェアのカテゴリ分類に応じた対応を例示している。カテゴリについては、 GAMP 5 をよく勉強しておかなければならない。「10. 用語集」には、ソフトウェアカテゴリの定義を以下のように記載している。同程度の信頼性を有するソフトウェアの属すべき範囲。ソフトウェアの性質や特徴を区分する上での基本的な分類。しかしながら、この説明ではさっぱり理解できないのではないだろうか。
2. 適用の範囲
2.適用の範囲 このガイドラインは、コンピュータ化システムを使用して GQP 省令及び GMP 省令が適用される業務を行う製造販売業者等に適用する。 このガイドラインの対象となるコンピュータ化システムの例として、 (1) 〜 (7) が考えられる。 また、対象外となるコンピュータ化システムは別紙 2 に記載する。 (1) 医薬品、医薬部外品の市場への出荷の可否の決定に係るシステム及び市場への出荷に係る 記録を作成、保存管理するためのシステム (2) 製造指図書、製造に関する記録等を作成及び保存管理するためのシステム (3) 製造工程を制御又は管理するためのシステム及びその管理データを保存管理するためのシステム (4) 原材料及び製品(製造の中間工程で造られるものを含む。以下同じ。)の保管、出納等の生産を管理するシステム (5) 品質試験に用いる機器を制御又は管理するためのシステム並びに品質試験結果及び管理データを保存管理するためのシステム (6) 空調、製造用水製造設備など、製品の品質に重大な影響を及ぼす可能性のある製造支援設備・施設を制御又は管理するためのシステム及びその管理データを保存管理するためのシステム (7) 文書(手順書類、品質標準書、製品標準書等)を作成、承認、保存管理するためのシステム |
!doctype>